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「現代労働問題分析−労働社会の未来を拓くために−」を読んで

JUGEMテーマ:社会の出来事


 「現代労働問題分析−労働社会の未来を拓くために−」を読んで
                            
石川 源嗣

 たまたま最近、石井まこと・兵頭淳史・鬼丸朋子編著「現代労働問題分析−労働社会の
未来を拓くために−」(法律文化社2010.4)の広告を新聞で見て、図書館にリク
エストしていたところ届いたのでぱらぱらと見ていたら、問題意識が共通する点
が多かった。

それで詳しく見てみたら、拙著とインタビューが引用・紹介されているのにぶつかりビッ
クリした。


この本の「はじめに」によると、出版の意図は次のようになっている。
「編者の兵藤・鬼丸を中心にした関東社労研のメンバーや下山房雄さんに関係のあるメン
バー」、つまり「下山さんの「磁力」に引き寄せられたメンバー」が、
「大学の教養あるいは専門で労働問題をこれから学ぶ大学生」を対象に、
「下山さんの喜寿にあわせ、この20年間席巻してきた新自由主義的潮流に一線を画する教科書」として、
「「私たち」の社会を作り出すための判断力と行動力を養ってもらうこと」を目的に出版したという。



本書は3部構成で、第吃堯崢其癲ο働時間問題」、第局堯峺柩冖簑蝓廖第敬堯嶇働
組合・労使関係問題」となっていて、私の現在の問題意識からは第局瑤痢峪唆
構造と雇用」(久野国夫)が面白かったが、全体を通しては労働問題に関心を持
つ大学生のテキストとして堅実な主張が貫かれいるのではないかとの印象を持っ
た。

出版の原動力になった下山房雄さんについては国鉄闘争の「闘う闘争団」支援に熱心な、
労働問題についての著名な学者ということくらいしか知らない。

いま問題にしているのは、
第敬第11章の兵頭淳史(専修大学経済学部准教授)「労働組合・労使関係問題の争点−労働組合の活路を拓くために」

第12章の東洋志(東京自治問題研究所研究員)「日本における「新しい労働運動」−非正規・個人加盟労働運動を中心に」
である。

前者の兵頭論文で注目したのは、「集団的労使関係」と「個別労働紛争」の分離、そ
して「個別労働紛争」からの労働組合の排除という政府の政策が労働審判制度な
どで急速に進められ、労働法学界でもそれを容認する見解が、菅野和夫や濱口桂
一郎などを通じて浸透していることに警鐘を鳴らしている点だ。

管見かもしれないが、この主張は、私たちが2006年の『ひとのために生きよう!団結への道』
で強調した論点の一つであったが、その前後ほとんど同じような見解に出会った
ことがなかった。やっとはじめて同調者を得た思いである。しかしこれは私の知
見の狭さで兵頭氏やそのほかの方ですでにこの主張をされていた先人はおられる
のかもしれない。

いずれにしても「個別労働紛争」からの労働組合の排除という問題は地域ユニオン・合同労組の
死活問題であり、「労働者代表制」を含むそのような策動(労働組合法の改悪も
ありうる)に十分警戒し、全国一般や全国ネットなどの全国的な共同行動を強め
なければならない。

兵頭論文では私の文章の引用はないが、「一過性のものではない賞味期限が長いものを採用
した」という[おすすめの本]に、「石川源嗣(2007)『ひとのために生きよう!
団結への道』同時代社」をあげ、「長年にわたって東京東部労働組合の専従とし
て活動してきた著者による,自らの運動体験をも踏まえて,「新しい時代の新し
い労働運動の構築」をめざす実践的労働組合論。集団的労使関係の衰退と個別労
働紛争の激増といった現状をリアルに捉えつつ,職場を基礎とする組織化と職場
闘争の意義を論じている」と評価してくれている。


後者の東論文は、「現実の必要に迫られた「新しい労働運動」形成の客観的根拠としての、
新自由主義に対抗し,企業別組合を乗り越える運動としての個人加盟ユニオン」
に寄り添った記述が特徴である。

「労働相談の場面では,その時代の最も先鋭な労働問題が現れる」という私たち現場の実
感を表現しつつ、「1人でも組合をつくり,団体交渉ができる労働法の力」「労
働法をフルに活用」「団体交渉を再生」「オルグの再評価」、さらに「財政難」
「人手不足」とユニオン運動の意義と課題を摘出している。

「新しい労働運動の課題」の一つとして「組合定着率の低さ」を論じているところで、
「全国一般東部労組は,すべての労働者を対象とした労働相談活動を基礎としつ
つ,職場闘争をユニオン運動の一環として強化し,職場における少数派から多数
派への形成を意識的に追求している[石川2009]。最近,個人加盟ユニオンのなか
に労働相談活動重視のあまり,職場闘争軽視の傾向もみられる。その意味で職場
闘争と労働相談活動の2本柱を重視する東部労組の活動は注目されるべきである」
と記述されている。

地域ユニオン・合同労組の今後の課題の焦点が「職場闘争と労働相談活動の2本柱」
および「職場における少数派から多数派への形成」にあると認識している私たち
の運動を正確に認識し、注目してくれたことに感謝したい。そこまで詰めた論究
と評価は初めてのことである。

いずれにせよ、私たち労働運動現場の問題意識と真剣に切り結べる学者・研究者の
登場を歓迎したい。
「切った張った」の労働運動現場の私たちと総括に専念する研究者との共同作業に
よる「新しい時代の新しい労働運動の構築」こそがいま強く求められているのだ
ろうから。

30歳代、40歳代の若い学者・研究者から私たちの運動と著作が取り上げられ、
紹介、引用されているのは多とすべきことであろうと思う。

<論文全文>
兵頭淳史「労働組合・労使関係問題の争点−労働組合の活路を拓くために」
http://www.rodosodan.org/2010/hyodo2010.4.pdf

東洋志「日本における「新しい労働運動」−非正規・個人加盟労働運動を中心に」
http://www.rodosodan.org/2010/azuma2010.4.pdf

<アマゾンリンク>
石井まこと・兵頭淳史・鬼丸朋子編著「現代労働問題分析−労働社会の未来を拓くために−」
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『ひとのために生きよう!団結への道−労働相談と組合づくりマニュアル』
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%88%E3%81%86-%E5%9B%A3%E7%B5%90%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93%E2%80%95%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9B%B8%E8%AB%87%E3%81%A8%E7%B5%84%E5%90%88%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB-%E7%9F%B3%E5%B7%9D-%E6%BA%90%E5%97%A3/dp/4886835740/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282044500&sr=1-1



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